AQL日記

能登麻美子さんを愛する犬AQLの、読むと時間を無駄にする日記です。"非モテの星から来た男"のMEMEを云々。

匂いの話

■匂い。

ちょっと変な話なのだけれど、僕は女性の匂いに興奮する類の人間だ。
こういう話題があれな人は、遠慮せずに戻ってください。




■愛と熱病

さて、あの女の話を少ししよう。
僕があの女と出逢って、浅慮にも愛してしまっていたあの頃、僕はあの女の匂いがたまらなく好きだった。

だが、あの女が本性を現し、僕を消耗品のように扱い、温厚な僕がついに苛立ちを隠せなくなってきた頃、その匂いがどうしようもないほどに不快なものに感じるようになった。
なんで今まで大丈夫だったのだろう、いいものに感じていたのだろう。僕は考えてみた。


例えば、人間はDNA的に自分に近い匂いを嫌悪する傾向にあるらしい。女性が自分の父親の匂いを殊更嫌悪するのはその所為らしい。近親交配を防ぐためにそういう傾向にあるのだという(ウェスターマーク効果なんてものもあったな、そういえば。関係ないけど)。なので曰く、相手の匂いを嫌悪しないということは、DNA的に相性がいいということになるらしい(ほんとか?)。

うむうむ。トンデモ説な気がしないでもないが、まあうなずける部分も無くはない。DNA的な相性の問題なんて、現代社会には些末な問題のような気がしてならないが、まあ、そういうことらしい。
ではそれを今回の場合に当てはめてみるとどうだろう。僕はDNA的に変容したことになる。

……いやいや待て待て。そんなはずはない。そんなジャック・フィニイの『盗まれた街』とかアンドリュー・ニコル監督の『ガタカみたいな話ではない。勿論スナッチャーでもないからJUNKERは呼ばないでくれ
というわけで、DNAが変容するなんてことはあってはたまらないので、そういうところではない部分で相手の匂いを(性的に)良いものとしていたのだろうと推測できる。なぜ性的に良しとしていたのか? 好きな相手だったから? 好きでなくなったから匂いも嫌悪の対象となったのか?



そういえば、昔、こんな話を聞いたことがある。

精神を病んだ時、まずもののニオイが解らなくなる、ということ。

実際にそれが本当かどうかは解らないけれど、僕はそのことがずっと引っかかっていて、それをふと思い出した。精神病や過度のストレスが嗅覚や味覚に影響するというのは、とても理解できる。幻覚や幻聴と比べてはっきりと実感しにくい分、兆候として(≒見過ごされる)発生することにも合点がいく気がする。



かつて沙翁(シェイクスピア)は『ヴェニスの商人』のなかで、こんなことを言った。

But love is blind, and lovers cannot see the pretty follies that themselves commit.

(恋は盲目であり、恋人たちは自分たちが犯す失敗が見えなくなる。)


この二つを合わせて考えると、自然ひとつの考えが浮かんでくる。

あの頃、あの女の匂いを良いものとしていた頃、僕は病気だったのだ。

恋はひとを盲目に変える。一般的に嫌悪される匂いに対して性的な興奮を覚えるということ、そして一時を置いてそれを嫌悪するようになるということ。精神病の兆候としてもし嗅覚障害があるとしたら、恋愛感情もまた精神病ということになるのではないだろうか。

別に僕は愛情というものを否定するつもりも、卑下するつもりもない。むしろ餓えている気さえする。人間には愛情が必要なのだ。だけどその感情が、どこから"いわゆる愛情"に変わるのか、僕は掴みかねている。なんとなく好きになって、なんとなく一緒になって。そういう次元で普通の人はやって行けるのだろうし、こんな莫迦げたことを考えたりはしないのだろう。正直そういうのをとても羨ましく思う。結婚するとか同棲するとか、相手を自分のテリトリーに入れて、自分の時間とか生活とか魂を削ってまで一緒にいたいと考えること、あるいはそうであると思い込むこと。僕にはそれがある種の宗教じみているような気がしてならない。僕としては相手を絶対なものとして想う傾向にあるから、もしもそうなのだとしても構わないのだけれど、他のひとはそうでは無いのだと思う。きっと何も考えず、自分の心地のいい(と思い込むことのできる)場所を相手に見出して、それに愛情というネームプレートをくくり付けて識別しているだけなのだろう。それが僕にはとても羨ましく思えたりする。

でもちょっとした作り手側にいる自分としては、こんなことも少しは考えたりしなきゃなって思ったりもする。別に正解はないし、わからないけれど。
でも愛情なんてのは思っているほど綺麗じゃないし、恋することと熱病に魘されることと、実は表裏一体近いのかもねってこと、そんなことを今日思ったよっていうことでした。



愛をくれ 絶対無敵の 愛をくれ。