現実が爛れていくのを感じる。
■最悪は重なるのか、重なるから最悪なのか。
どうしようもない現実が怒濤のように押し寄せる。すべての歯車がずれている。現実の綻びを一つ見つけるたびに、僕は憂鬱を背負い込む。厄介事を押しつけて、あの女は楽しくやっているらしい。及川光博の『フィアンセになりたい』の歌詞を想い出す日々。冷たくなったスマホを手に、僕は澱のように溜まった溜息を血液に溶かし込む。斜陽が毒のように部屋を埋める。僕はただただ小さく味のしない唾液を嚥下する。現実が逼迫している、現実が爛れている。助けてくれ。やさしさの奔流で僕を滅してくれ。不甲斐ない僕に、倖せのかけらを贈りつけてくれ。
巣鴨睦月「自信のない自分を棚に上げて、自分よりも弱っている相手に手を差し伸べる。自分以外のなにかを救うフリをすることで自分を納得させるんです」
人見広介「けれど僕は、そうじゃなくて、信じたいから‥‥安心したかったから」
巣鴨睦月「そう‥‥ですよね。自分を慕ってくれる弱者。でも、その弱者が運命に立ち向かって羽ばたこうとすると、我慢できなくなってしまう。いつまでも自分だけの標本箱の中にコレクションしておきたいのに‥‥」
(『さよならを教えて』)
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