AQL日記

能登麻美子さんを愛する犬AQLの、読むと時間を無駄にする日記です。"非モテの星から来た男"のMEMEを云々。

『しかばね少女と描かない画家』

■昨日たわむれに本屋に行った

んだけど、というか買いたい漫画があったからなんだけど、それを探している最中に、なんだか惹かれて手に取った漫画が、

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だった。『しかばね少女と描かない画家』
別に平置きされていたわけでなくて、一冊だけ新刊コーナーの棚に挿してあったんだけど、なんか誰かが手に取ったのか奥まで差し込まれておらず、少しだけ浮いてた。それで気になって観てみると、いやはやなんだかおもしろそうだぞと。だけど表紙絵に騙されることは少なからず経験しているので(??「はぁーまた表紙に騙された」)、そういうときには全一巻だと非常に嬉しいんだけど今回は続刊らしく、ちょっと店内で悩む。一応Amazonさんでレビューを調べてみるけど0件。それもそのはず、発売日がなるほどyesterdayじゃねーの。


というわけで、しばし自問自答しながら、友人にLINE。

「漫画買うけどつまらなかったらきみに贈るよ」

いや、別につまらなくても実際に焚書を頼んだりはしないんだけどね。なんというか、保険。そんなふうに後押ししてもらって、漫画を買ったよ。あ、最初に探してた漫画『純水アドレッセンス完全版』も見つけたので購入。これは資料としての面が強いかも。

純水アドレッセンス 完全版

純水アドレッセンス 完全版



■りりりりりりりリリ。

で、帰ってすぐに『しかばね少女と描かない画家』を読んでみたけど、なんだこれ、すごい面白いぞ。

まず重要なポイントとして絵が綺麗だ、これは重要だ。話がつまらなくても最悪画集として眺められれば保管に値する。けれど絵が汚いと、ちょっと難しい。ちなみにここでいう綺麗とか汚いというのは上手下手っていうこともあるけど、それが100%ではないことに留意されたい。まあ自分の書棚に置くこと、そしてそれを見られることに拒否感の出ない作品だったらいいよねっていう、感覚の問題だったりする。そしてこの漫画は、書棚に飾るに値する綺麗さがあったよ。

物語としては、天才女流画家ジュリの死を嘆いた博士が、少女の遺体にジュリの魂を移植、それが少女リリ。そんな半死人のリリに、絵を教えてやってほしいと頼まれたのが、ひきこもりの青年画家ネルだった。――というようなもの。

劇中の年代は明記されていないが(見落としてたらゴメンナサイ)、19世紀くらいではないだろうかと、なんとなく。世界観としては屍者の帝国に、主人公ネルとリリの関係としてはBLOOD ALONEに近しいように感じた。

天才画家の魂を移し替えられたリリは、青年ネルのもとで絵を学ぶことになる。しかしこのリリがなかなか不思議な設定で、遺体だったわけで、食べたり飲んだりすれば食物は体内で腐るし、無理をすれば肉体が損壊する。言ってしまえば生きた機械人形なわけだが、ローゼンメイデンに出て来る薔薇乙女たちよりは無機物的と言えるか。フランスの医学者、ド・ラ・メトリは「人体は自らゼンマイを巻く機械であり、永久運動の生きた見本である」(『人間機械論』)なんて書いたらしいが、少女リリは、その女流画家の魂を移し替えられたという一点のみを支えに生き、動いている。死んでいるのかどうか、どうして生き返ったのか、そんなことはリリの可愛さの前では些末な問題に過ぎない。

で、まあ、無理をするとぼろりと腕がもげてしまったりするリリを、青年画家は補修してやる。この補修が、僕にはなんとも甘美に思えてならない。まあ繋げてヒビや傷を絵具で隠してやるだけなのだが、その関係性が素晴らしい。ちなみに泣いたりしても塗装が剥がれおちるので、それも補修してやる。メイク道具ではなく、絵具と絵筆でやるのが、なんとも愛らしい。画家という職業としかばね少女という設定を、うまいこと利用している。この関係性はBLOOD ALONEのときにも感じた良い関係性だ。実際に球体関節人形を一から作って娘を産んだ僕としては、なんとも自分を重ねて見てしまうからか、こそばゆくもあるが笑。


この漫画は、少女リリを通して絵を描くということの〈本質〉を探ろうとしているように思う。美麗な筆致と面映ゆい関係性。曲がりなりにも、絵を描くことでお金をもらえる立場にいる自分としても、この漫画は何かのきっかけになるのではないかと感じる。青年と少女以外にもクセのある、それでいて嫌悪感のないキャラクターが登場し、そしてそれぞれが絵に対して異なる意識・考えを持っている。どう展開していくのか、先を楽しみに思う。

気になる方がいらしたら、公式ページで1~3話と最新話が読めるので、読んでみて欲しい。リリちゃん可愛いから。ほんと。


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