ぼくらの戰い
■消費される魂。
2016年が始まったというのに、僕の人生は変わらぬ温度で茫洋と横たわっている。バッテリー消費の激しすぎる代替機のように、僕もまた消費していくのだろう。
僕は車の免許こそ持っているけれど、ペーパードライバーだから運転することはない。バイクの免許は持っていない。この前初めてバイクにタンデムさせてもらって、風を感じた。風をあつめた。初めての経験で、とてもいい体験だった。
新しいことを始めていかねばならない、愚鈍と慣れを人生の処世術にしてはいけない。新しいこと。新しい戦い。魂を焦がすような戦いを、そろそろ始めねばなるまい。あれほど鋭利で切実だったあの女への報復心が消えてしまったように、そしてそんな下らない戦いに人生を消費してしまったことへの戒めのように。僕はまた新しい戦いを始めていこうと思う。ひとは死ぬ、早いか遅いかだけだ。
ぼくらはそこで勝ち、そこで破れます。もちろんぼくらは誰もが限りのある存在ですし、結局は破れ去ります。でもアーネスト・ヘミングウェイが看破したように、ぼくらの人生は勝ち方によってではなく、その破れ去り方によって最終的な価値を定められるのです。
(村上春樹『かえるくん、東京を救う』)
ぼくもまた、戦い、破れ去るだろう。
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2002/02/28
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